会社を設立するとき、必ず検討するのが消費税の取り扱い。
条件を満たせば2年間は免税事業者になる。
免税事業者は消費税の納税の義務が免除されます。その意味するところは、消費税を国に納めもしないし、払いすぎた消費税の還付も受けない。
中小企業アルアル。「免税事業者だから消費税は払わなくていいよね?」
免税事業者だから消費税はかからない。その分おまけしてよ。という話は一見すると合理性があるように思える。
しかし、これは大きな勘違い。
具体例で解説します。原価率6割の商品を100円で販売したとします。
通常の課税事業者だと
売上100円 預かった消費税8円
原価 60円 仮払いした消費税4円
となります。キャッシュフローベースだと108円受け取って、仕入れに64円支払い、4円納税して+40円
しかし、免税事業者が消費税分をおまけすると以下のようになります。
売上 100円
原価 64円
このようになるため、キャッシュフローベースだと100円受け取って仕入れに64円支払い、+36円
つまり、免税事業者が消費税分を値引きすると、課税事業者に比べて対応する消費税の一部に相当する額を損することになるのです。
免税であろうとなかろうと、消費税を値引きさせるのは注意が必要
実は比較的大きな企業が消費税の価格を値引かせる(転嫁させない)ことは「下請けいじめ」と呼ばれる行為になります。
通報制度(匿名OK)がそろっているので、わざわざそんなリスクを背負わないほうがよいでしょう。
特に免税事業者は小規模な会社であることが通常ですから、基本的に不合理な要求に対しては社会は免税事業者側の見方になります。
消費税のことは無関係で経済合理性の観点から何%割り引いてほしいという話をするのが良いでしょう。
簡単に表現すると、「資本金3億円以下の事業者と継続的に取引している買い手」は特定事業者とされて、下請け先(売り手)に対して消費税の減額、買いたたき、補てんのための役務提供などが禁止されています。
これは中小企業庁と公取がなかなか目を光らせていて、頻繁にアンケート記載を企業に依頼して調査しています。この調査に引っかかり必要だと判断されると公表されます。基本的には強者である大きな企業が行うことについて公表されるケースが多いようです。
消費税については値引きは一切しない。軽い気持ちで法令違反をしないために
いろいろ書きましたが、売り手も買い手もこれだけ心に留めておいてください。
売り手も買い手も消費税は値引きは一切しない
これが事業者同士の取引の鉄則です。
事業者同士・・・BtoB
事業者と一般消費者との取引( BtoC )はどうでしょうか。
こちらは様々な表示方法が認めれているので、
許可されたあ方法のうち、一番売れる表示方法を選ぶ
と良いでしょう。一番売れると簡単に表現していますが、瞬発的に売れるだけではなく、表示の誠実さ等も中長期のロイヤルカスタマーの獲得には必要でしょうから、経営判断がはたらくところです。
(おまけ)BtoCで禁止される消費税に関する表現の例
(1)取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
ア「消費税は転嫁しません。」
イ「消費税は一部の商品にしか転嫁していません。」
ウ「消費税は転嫁していないので,価格が安くなっています。」
エ「消費税はいただきません。」
オ「消費税は当店が負担しています。」
カ「消費税はおまけします。」
キ「消費税はサービス。」
ク「消費税還元」,「消費税還元セール」
ケ「当店は消費税増税分を据え置いています。」
(2)取引の相手方が負担すべき消費税を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
ア 「消費税率上昇分値引きします。」
イ 「消費税8%分還元セール」
ウ 「増税分は勉強させていただきます。」
エ 「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします。」
(3)消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって(2)に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの
ア「消費税相当分,次回の購入に利用できるポイントを付与します。」
イ「消費税相当分の商品券を提供します。」
ウ「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します。」
エ「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」
(おまけ)個人に対して行われている消費税のわかりにくさ(質屋の例)
質屋を利用したことはありますでしょうか?私はまだ利用したことは無いのですが、基本的には消費税込みで交渉されているようです。「う~ん、このバックは1万円で買い取りだね」となると事業者の感覚だと10800円で買い取りですが、個人相手なので9260円+740円の税ということで交渉されています。もっと透明性があるといいですね。一度、「税込みで10800円での買い取りではないでしょうか?」と交渉してみるのも良いのではないでしょうか?質屋側では免税でない限り原則として1万円と提示しても実際の帳簿では仕入れが9260円なのですから。個人の方も普段から消費税を意識することで商売の見え方が変わってくるかもしれません。道義的な問題はさておき、一部の質屋は消費税を意識させず安く仕入れるうまい商売しているなと思います。
著者紹介(Author Profile)

- イーグル会計事務所
-
本当はシステム開発が天職だと思っている公認会計士です。プログラムは何時間でも書き続けられます。個人的には金融、IT系、製造業系の会社が強いです。事務所としては数では飲食店のお客様が結構多いです。お客様の飲食店に伺うことも多いので太らないようにしていますが、その甲斐も虚しく最近太ってきています。
【キャリア】システムエンジニア→大手監査法人→メガバンクで銀行員→上場企業で最高財務責任者(CFO)→(ここから独立)イーグル会計事務所立ち上げ→税理士法人イーグル立上げ→イーグル会計事務所に戻る
【所有資格】公認会計士、税理士、中小企業診断士、第一種情報処理技術者、証券アナリスト、不動産証券化マスター等
【趣味】 温泉、洋楽、単車、漫画など
Latest entries
経営お役立ち情報2020.05.09中小企業人材オンラインスキルアップ支援事業の申請書類を記載例として公開
経営お役立ち情報2020.05.08働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)の申請書を作成したので記載例として公開
社会保険2020.04.23しごと財団 テレワーク助成金の申請書を作成したので記載例として公開
お知らせ2020.04.23(お知らせ) 来週から弊所は一部休業予定