起業するにあたって、まず決めるのが会社を作る(設立)か個人事業の形態か。

そもそも、会社の管理部門の方以外は会社ってわかったようなわからないようなと感じられている方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、個人事業主(会社登記なし)と会社を設立する2択で確認したいと思います。

 

個人事業主の良い点(メリット)

事業の開始がシンプル

登記所等の面倒な手続きなし。基本的には開始届と青色申告の届出の2つでその他必要に応じて。

 

事業を開始するための費用が安い

株式会社は約20万円、合同会社は約6万円、会社を作るだけでかかりますが個人事業はこれらの費用がかからない

 

個人事業のほうが税金が安くなるかもしれない

個人事業に対応する税金は所得税。会社に対応する税金は法人税。

法人税は基本的には利益に対して一律の税率が適用されますが、所得税は累進課税といって、高額所得には高い税率を、低額所得には低い税率をかける方式です。

所得が低い場合には所得税のほうが法人税より税率が低いです。

※ ただし、政府の方針として今後法人税の減税を進めていくことが報道されていますので、今後はどちらが得か確認が必要です。税理士にご相談ください。

政府は企業の利益にかかる法人実効税率を今の32.11%から2016年度に30.99%以下に引き下げる方向で調整に入った。引き下げで減る税収を埋め るため、企業の設備投資を促す目的で時限的に設けた設備投資減税などの減税額を減らす。政府は企業の国際競争力を高めるため法人実効税率を17年度に 20%台に引き下げる方針で、そこに至るペースを早める (日経 電子版 ヘッドラインのみ 2015/11/2)

 

固定の税金がかからない

会社を設立すると利益が出てなくても毎年約7万円の税金(専門的には法人住民税均等割りという)を払わなければならない。個人事業主では赤字の場合は税金がかからない。

 

消費税を免除される期間が長くなる可能性がある

個人事業主で2年間、法人化して2年間の最大4年間の免税を受けられる可能性がある。

消費税率は上がっていく方向性ですので非常に大きな影響があります。ただし、条件はなかなか細かいのでご自身で判断されず税理士に相談するのをおすすめいたします(国税HP 消費税納税義務の免除基準)。

 

事業を畳む際の費用が安い

残念ながら事業をやめる際には、きれいにしなければなりません。株式会社は会社を畳む際にもお金がかかるのです。公告や登記等の正式な手続きをすると15万円程度でしょうか。個人事業主は事業をやめるときにパッとやめられます。

 

会社を設立の良い点(メリット)

 

信用力が高まる

商売をするのに、信用があると大きな違いです。

会社形態は個人事業主に比べて、資本金もかかるし、設立費や維持費もかかる。それなのにあえて会社を選択して時商売をすることは真剣度が伝わってきます。

さらに、会社にどれくらいの弁済能力があるのかは資本金を見れば明らかなので信用力も付きます。

旧来の顔見知りとの商売や個人ブランドが重要なコンサルタントやタレントであれば、個人事業主で全く問題ないですが、会社化したほうが信用力があることは多いです。

 

思わぬ損害賠償や借金を受けなくて済む

会社には有限責任と無限責任の2つのタイプがあり、これは有限責任の会社(株式会社等)に限った話ですが、株式会社の場合は責任は会社の資本に限定されます。

これは非常に大きなメリットです。これがあるから、事業を拡大して会社を大きくできる。

会社が一定程度大きくなってくると様々な関係者が会社にかかわってくるようになる。世の中には様々な方がいて、中にはクレーム等で何とか責任を負わせてお金をとろうとしてくる方もいます。

裁判沙汰も経験することもあるでしょう。

例えば、昨今、世界的にはやっている「Airbnb」というサービスがあります。これは個人の空いている家や部屋を海外からの宿泊したい人とマッチングさせて泊まらせるサービスです。旧来からの古い言い方だと「民泊」といいます。

これは現在は結構儲かります。本格的に民泊用の物件を買って運用されている方もいらっしゃいます。

しかし、この民泊における「リスク」にピンときますでしょうか。宿泊施設に管理者が常駐していない場合は、どんなクレームと事故による損害賠償が起きてもおかしくないです。悪質な方は、演出するでしょう。海外の方に日本の常識を当てはめてはいけません。実際に、本日も民泊トラブルの報道がされています。

7月下旬、東京都渋谷区のマンション12階のベランダから、中国人の女児(4)が転落死した。民泊中の事故だった。観光で来日し、母親は近くのコンビニでディズニーランドのチケットを買っていた。部屋はネットで予約していた。

だが、駆けつけた所有者側は、転落した女児が誰かわからなかった。「社宅に使う」と言う会社に貸した部屋で、民泊に使われるとは想像もしなかった。管理会社は無断で民泊に使った会社に対し「損害賠償などの法的手段を含めて対応している」と話した。(朝日新聞 2015/11/8)

しかし、ここで会社を設立した際の強み。

会社は大きな損害賠償等を受けたら畳めばいい。それ以上は追及されない(他の契約等していた場合には別)。家族も守れる。

そのほかにも、「ユッケ」で食中毒起こした焼肉屋(フーズ・フォーラス社)なんかも個人事業主だったら損賠賠償等で大変なことになっていました。

これが最も大きな会社設立のメリットでしょうか。

 

決算期を自由に選べる

個人事業主の場合は暦年(12/31)固定です。法人の場合の決算期はいつを選んでも良いので閑散期等に決算をして業務負荷の分散をしたりできます。また、消費税免税期間の関係での調整による節税もできます。

 


以上、いかがでしたでしょうか。

いろいろ細かいところありますが、一言で言うと「知見のある商売を小さくやっていくなら個人事業主、その他は会社を設立」というところでしょうか。いろいろポイントはありますが、細かい点は税理士に任せ、弊社とお付き合いいただいている方は、本流である商売に邁進して素晴らしい会社を築き上げてほしいです。