会社設立を専門家に相談したときに、

専門家 : 「自分で手続きするより専門家にお願いしたほうが電子定款を利用することができるので印紙税代4万円が節約できて安上がりですよ!」

お客様 :「えーーー!それだったらお願いしたほうがお得じゃないか!」

という話になることがあります。

ところで、なんでそんな不思議な話になるのでしょうか。その疑問にお答えするとともに、電子定款の作り方もご説明します。

紙で定款作ると徴収される印紙税

会社を運営していくといやというほど出てくる印紙税。そもそも印紙税ってよくわかっていないやという方のために簡単に復習しておきます。

印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)など に課税される税金で、末尾の印紙税額一覧表に掲げられている20種類の文書が課税の対象となります(国税HP)。

ルールとしては契約書や領収書に税金払ってくださいというものです。以上なんですが、ここで立ち止まって考えてみてください。そもそも、なんでこんな税金かかるんだろうか?と疑問に思われる方もいると思います。契約書や領収書作ったら税金ってなかなかつながらないですよね。

ここで印紙税のブラックな面を。

  • アメリカの独立戦争は当時アメリカを植民地として支配していたイギリスが印紙税を課したことが発端だった
  • 他の税金と比べると、国民に重税感を与えにくいという特徴があり、各国に普及
  • 日本における印紙税の税収は10兆5600億円で関税より多く財源として大きい(平成26年度)
  • 最近はその不条理さから世界的には廃止縮小の方向

日本でも小泉元首相が印紙税について国会で答弁したことがありました(平成17年第162国会櫻井参議院議員の質問)。

Q: 質問:明治維新の頃における我が国の租税は地租に偏重していたために、商工業を軽く、農業に重く課せられることになり、商、工、農間における租税負担の権衡が失われていた。そこで、この是正を図るために、地租の改正に着手するとともに、商工業に重課されることとなる租税として導入されたのが、我が国における印紙税の起源であると承知している。しかし、現在の租税負担は農業より商工業に重くのしかかっており、導入当初の印紙税の役割は既に果たし終えたと考えられるが、政府の見解を示されたい。

A:答え:我が国における印紙税は、明治六年に制定された受取諸証文印紙貼用心得方規則(明治六年太政官布告第五十六号)に起源があり、当時、地租改正に関連する税制の整備の一環として、数多くの税とともに、御指摘のような考え方も踏まえつつ我が国の財政に寄与するために導入されたものであると承知している。
この受取諸証文印紙貼用心得方規則は翌明治七年に廃止されて証券印税規則(明治七年太政官布告第八十一号)が制定され、明治三十二年にこれが廃止されて、印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)が制定され、昭和四十二年にこの印紙税法を全面的に見直し全部改正を行って現行の印紙税法に至っているが、このような印紙税に関する法の改廃等は、社会経済情勢の変化や財政状況等を踏まえ、その時々の税体系及び税収面で印紙税の果たすべき役割について国会での審議等を経て行われてきているところである。こうした変遷を経て、現行の印紙税法については、御指摘のような商工業と農業の間における税負担の均衡を図るという制度創設時の目的は薄れてきたが、他方で、複雑化する法律関係の中で文書作成により法律関係の安定化を図ることは依然として広く行われており、そうした文書に軽度の負担を求めることについて、なお妥当性は存在すると考えている。また、印紙税は、長い歴史の中で我が国の経済取引の中で定着してきており、我が国の税体系及び税収面で基幹税目を補完する重要な役割を果たしている。

苦しい答弁です。さらにこんな質問も

Q:質問 印紙税をめぐる問題は山積している。このような印紙税は、果たして税制の基本原則に則していると言えるのか。また、印紙税の廃止を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

A:答え 印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であり、いわゆる流通税の一つとして、現在においても、我が国の税体系及び税収面において基幹税目を補完する重要な役割を果たしていると考えている。お尋ねの税制の基本原則との関係について特段の問題があるとは考えておらず、また、税収は、平成十七年度予算で約五千億円となっており、現下の極めて厳しい財政状況において貴重な財源となっていることから、印紙税を廃止することは考えていない。
なお、印紙税も含め、税制は社会経済情勢の変化や財政状況等を踏まえ不断の見直しを行っていくべきものであると考えている。

これまた苦しい答弁です。ちなみに答弁に出てくる税制の基本原則とは税は「公平・中立・簡素」であるべきということです。

ちなみに、印紙税は海外でもありますが、海外では範囲や額はだいぶ縮小されている傾向があります。アメリカなんかは不動産関連以外はほぼ無いです(州によってやや異なります)。

長くなってしまいましたが、定款を紙で作るとそれは印紙税の課税文書に決められているため印紙税を払わなければならないということです。ちなみに印紙税は4万円です。”紙”でなければ印紙税の対象ではないので、電子定款の場合はかからないということになります。

よくわかる電子定款の作り方

実際に電子定款を作る前に一言。

面倒です。パソコンに自信ある方以外はやめたほうがいいです。

ただ、実際に自分でやるかはおいておいて、やり方を一通り理解しておくのは良いのではないでしょうか。

電子定款作成にあたってそろえておくべき必要なもの

  • ICカード読み取り機械 (2000円~ 家電量販店で買える。「公的個人認証サービス対応」と書かれているもの)
  • 自分の住基カード(手数料0~500円。免許証等を持って役所へ。)
  • 電子証明書(手数料500円。住基カードと一緒に電子証明書も役所で発行してもらいます)
  • 定款を電子化するソフト(0円~2000円程度 Adobe Acrobatを使用。製品HPから体験版をインストール)

安く仕上げれば3000円くらいでしょうか。定款を電子化して電子署名をつけるソフトが35000円すると説明されている方もいますが、それはソフトを買い切る方法で一番高く行う場合のやり方です。体験版を利用するか、クラウド(レンタル)を1か月申し込んで使うのが賢いやり方です。

電子定款作成手順

さて、必要なものはそろえられたでしょうか。

実際に電子定款を作成して提出し完了まで行きましょう。

  1. 紙の時と同じようにワード等で定款を作成
  2. 作った定款のドラフトを紙の時と同じように公証人役場にFAX等してチェックしてもらいアドバイスを受け修正
  3. 定款を電子化するソフトをインストール(製品HPから体験版をインストール)
  4. 出来上がった定款をPDF形式で保存(製品のマニュアルで該当する箇所
  5. 電子署名をつけるソフトをインストール(登記ねっとで「PDF署名プラグイン」をインストール)
  6. ICカードリーダーをPCにさし、カードリーダーに住基カードをセット
  7. Adobe Acrobatを開き、定款のPDFに電子署名をつける(通常のAcrobatの電子証明書をつける操作。デジタルIDは住基カードのをセット)
  8. 登記ねっとに利用者登録(登記ねっとの申請者登録からご自身を登録)
  9. 申請用総合ソフトをインストール
  10. 申請用総合ソフトを利用して作成した電子署名入り定款PDFを設立する会社の地域を管轄する公証人役場へ送信
  11. 公証人役場の確認が終わったら連絡が来るので実際にその公証人役場へ足を運んで電子定款を受け取る。公証人役場からの電話で受け取る際に必要な持ち物は確認しておく。

 

以上、これで会社設立登記の際の定款が完成です。

電子定款の作成手続きいかがでしたでしょうか。面倒です。特に最後の公証人役場へ足を運んで受け取りに行かなければならない点、せっかく電子でやり取りしているのに最後はアナログが入ってずっこけるかたもいらっしゃるでしょう。

会社設立のご相談があるごとに我々専門家はこんなことをやっているのでした。