日経にタワーマンションの相続税評価額の見直し記事がありました。
総務省と国税庁は2018年にも、価格の割に相続税が安くて済む高層マンションを節税目的で購入する動きに歯止めをかける検討に入った。現在は階層や購入 価格にかかわらず一律となっている相続税の「評価額」を高層階に行くほど引き上げ、節税効果を薄める。高層階の物件は税負担が重くなる一方で、低層階を中 心に負担が軽くなる人も出てきそうだ。~中略~高層階の税負担を大幅に増やすと購入を手控える動きが強まり、マンション市場を冷え込ませる恐れもある。総務省と国税庁は市場への影響も慎重に考慮しながら、税の引き上げ幅を慎重に検討する。
以前、タワーマンションの相続税評価額について国税が問題意識を持っている記事「中古マンションの在庫が激増。売れないのか。不動産には税制で逆風が吹き始める」を書きましたが、その続編という位置づけです。
今回、国税の調査だと相続税評価額は実際の時価に比べて1/3くらいだったということが明らかになりました。
また、総務省と国税の方針としては、上層階に行くほど補正をかけて値段を高くするという方針のようです。そのため、低層階の方は逆に相続税評価額が有利になるケースもありえるとのこと。
マンション市場を冷え込ませる恐れについても言及されています。補正率だけ見るとそんなに影響はないように感じますが、心理面への影響は未知数ですね。
いま、時価の1/3くらいに相続税評価額が減る状況が、今後補正率をかけて2/5になったとしても、お得なことには変わりないですね。
しかしながら、もう既に節税を見越して買ってしまった方は節税効果が薄れそのままキャッシュアウトの増額につながるので辛いと感じられる方も多いかもしれません。
節税商品を買うときは、将来の法制や国税方針の変化に注意
タワーマンションに限りませんが、節税商品を買うときは、将来の法制(税制)と国税の方針(通達)が変化するリスクはきちんと認識する必要があります。
保険、リース、不動産が主でしょうか。海外を絡ませた信託商品なども狙われることがあります。
近年で一番、肝を冷やされたのは航空機リースでしょう。
航空機リースは人気の節税商品です。
組合を設立してお金を集め、航空機を購入して航空会社に貸し出すという比較的シンプルな形式。
以前、組合の解説「投資組合をチェック!法人税が・・・無いなんて。知っておくべき株式会社以外のカタチ」で解説しましたが、組合の場合は、組合自体に法人税はかからない。
そのため、所有している航空機の減価償却費を組合員それぞれが一定割合を計上できるので節税になります。航空機は耐用年数より償却年数が短いため、短期間で多額の償却費を出せるのです。
億単位で買われる大口の方を中心に多く方がこの節税商品を購入されました。
そこで・・・国税の見解が変わります。
組合で持つ航空機は不動産ではなく出資金
なかなか、法律形式を飛び越えたアグレッシブな見解です。
出資金となると、航空機リース商品で発生する減価償却等の費用は損益通算できません。そうすると節税力がなくなる。
国税はこの見解を元に、航空機リース購入者リストをもとに片っ端から税務調査に入って富裕層を震撼させました。当時のニュースではこのような報道もされています。
野村証券系のリース会社「野村バブコックアンドブラウン」が考案し、全国の資産家に出資を勧誘した航空機リース事業について、国税当局は、「課税逃れの商品」と認定した。
70人の資産家が、この「租税回避商品」に出資することで所得を計数十億円も少なく申告しており、国税当局はこれを申告漏れとしていっせいに課税に踏み切った。
申告漏れを指摘された出資者は、関東地方に21人、中部地方に6人のほか、大阪、福岡、北海道など全国にまたがっており、著名な経済評論家も含まれている。修正申告に応じなかった資産家については追徴課税(更正処分)した模様だ。以下略 (2004/3/16 読売)
実際に何億も投じた方は突然の認定に慌てたことは間違いありません。
しかし、本件は裁判で争われ、国税が敗訴します(平成16年(行コ)48号等)。さすがに経済効果に着目した強引すぎる解釈だったからでしょう。
詳しい内容が知りたい方は税務大学校の当時の論文「匿名組合契約に基づく分配金に係る所得区分 -いわゆる航空機リース事件の検討を契機として-」にうまくまとめられていますのでご参照ください。少し、国税目線が強い論調なのでそこは割り引いて読む必要があるでしょう。
本件は、多くの方を不安にさせ、追徴等を払われた方も多い中、結局は間一髪のところ国税敗訴で元通りになりました。このように、節税商品は突然、節税できなくなるリスクと隣り合わせということをしっかりと認識する必要があります。