人気ロックバンド「U2」。日本でも人気なので耳にしたことがある方が多いと思います。

最もポピュラーな代表曲は「with or without you」あたりでしょうか。

 

さて、そのU2のベースを担当するメンバーのクレイトン(Clayton)氏が会計顧問に損害賠償を起こしたことが報じられています。

訴訟の概要

U2 bass guitarist Adam Clayton has sued his former accountant, Gaby Smyth, for more than €10m losses, plus damages, as a result of several failed investments.

(ソース元) News Courts

クレイトン氏側の主張としては、顧問税理士の熱心な投資アドバイスに従った結果、大損を被ったため、その損害を賠償しろという訴えです。

税理士顧問側の主張としては、基本的に会計・税務を担当していただけである。クレイトン氏側からの希望により投資に関するアドバイスはすることはたまにあった。

請求金額は1,000万ユーロ(日本円で13億円くらい)です。

税理士が勧めてきた金融商品で損したのでその損を埋め合わせろと訴訟

会計事務所としては他人事ではない事案です。

日本ではあまり聞かない事案です。そもそも、日本では投資に関する助言を業としてする際にはライセンスが必要です(参考:関東財務局HP)。

日本での類似事例

 A氏は、B銀行、生命保険各社、D税理士を相手取り、「変額保険に加入する際、損失を被るリスクのあることを説明しなかった不法行為がある」として、7億円に上る損害賠償を求める裁判を起こし、1審判決では一部勝訴していた。

 しかし東京高裁は、A氏に投資経験があり、マネー誌を購読していたことなどから「投資に関する知識が通常よりも優れていた」と認定。D税理士がA氏の求めに応じ、変額保険を活用した場合の節税効果などを試算し、それを説明するとともに、アメリカの株式暴落のあったブラックマンデーに関する新聞記事を拡大コピーし、資料に付けてA氏に提供していたことを重視。A氏の知識などを踏まえ、「税理士のリスク説明は十分だった」と認め、説明義務違反の不法行為はなかったと判断した。

(ソース:エヌピー通信社)

 

バブル崩壊で税理士から勧められた金融商品を購入して損害を被ったとして訴えた事例があるようです。一審は原告一部勝訴、二審の高裁で被告(税理士)が逆転勝訴。今回のケースでは、金融商品といっても保険商品なので税理士が助言できるタイプなのでしょう。しかし、着眼点はリスクをきちんと顧客に説明できていたかという点が重要なので参考になります。

日本でも数年前にドル円為替が80円台だったころ、通貨デリバティブを銀行の勧めで導入した多くの企業で深刻な損失が発生し、社会問題化しました。また、通貨需要がなく単なる投資としても駒澤大学が160億円の損失を出し、キャンパスを担保にして凌いだ事案が記憶に新しいところです。本件は証券会社側の説明が十分だったと大学側が敗訴しています(日本経済新聞(2015/1/30

本件からわかる経営者と税理士のあるべき姿

経営者としては余剰資金がある場合や節税対策として何らかの金融商品を税理士から勧められた場合には納得するまで説明を求め、自分で理解したうえで結果を受け入れる覚悟で判断する必要があります。

税理士側も訴訟に至るリスクが高い行為という認識を持ったうえで十分に説明を尽くすのを徹底する必要があります。

基本的には事業会社は本業で頑張って利益を稼ぐことに集中し、余剰資金の事業以外への投資等については基本的には二の次というスタンスが大切か。