アベノミックスで株式市場は盛り上がりました。
2012年に日経平均株価は1万円程度だったのが2015年には2万円になりました。3年で2倍です。
また、「くじら」と呼ばれる日銀によるETF購入、年金(GPIF)による株式保有比率の引き上げ、制度面では一定の額を非課税とするNISAなど、官を挙げて株高を進めています。野村証券の調査によるとNISA口座の開設をした人は2015年末980万人と推計しています。すごい数です。
新規の投資家がかなり増えたことでしょう。
今回は個人の投資に関する税制をまとめます。
個人の金融資産に関する税の取り扱い一覧表
# | 商品の種類 | 所得内容 | 所得の種類 | 課税方法 | 補足 |
1 | 上場株式 | 売却益 | 譲渡所得 | 申分(申不) | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
配当 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | 総合課税の場合は配当控除あり | ||
2 | ミニ株・累投 | 売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
配当 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | 総合課税の場合は配当控除あり | ||
3 | 信用取引 | 売却益 | 譲渡取得 | 申分 | 配当等調整金も売却損益に含めて計算
特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
4 | 非公社債信託 | 売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
5 | 上場株式投資信託 | 売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
収益分配金 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | |||
5 | 上場不動産投資信託
|
売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
収益分配金 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | |||
6 | 公募株式投資信託 | 償還・解約益、買取・売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要可 |
収益分配金 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | |||
7 | 公社債投資信託 | 売却益 | 非課税 | NA | |
収益分配金、償還・解約益 | 利子所得 | 源分 | 収益分配金については「マル優適格」あり | ||
8 | 利付公社債 | 売却益 | 非課税 | NA | |
収益分配金 | 利子所得 | 源分 | マル優適格、特マル優適格あり | ||
償還益 | 雑所得 | 総合 | |||
9 | 商品先物 | 利益 | 雑所得 | 申分 | 「くりっく365(FX先物)」との相殺可 |
10 | 日経平均先物・オプション | 利益 | 雑所得 | 申分 | |
11 | 外国為替証拠金取引(FX) | 利益 | 雑所得 | 申分 | |
12 | 上場外国株式 | 売却益 | 譲渡所得 | 申分 | 損益の先物取引との相殺可 |
配当 | 配当所得 | 申不、総合、申分 | 控除外国税額あり。配当控除は無し | ||
13 | 外国投資信託(外貨建てMMF) | 収益分配金 | 利子所得 | 源分 | |
換金時 | 非課税 | NA | 損失が出た場合も通算不可 | ||
14 | 外貨預金 | 利息 | 利子所得 | 源分 | |
為替差益 | 雑所得 | 総合 | |||
15 | 外国債券(利付債) | 売却益 | 非課税 | NA | |
収益分配金 | 利子所得 | 源分 | |||
償還益 | 雑所得 | 総合 | |||
16 | 外国債券(割引債) | 売却益 | 譲渡所得 | 総合 | 50万円の特別控除あり |
償還益 | 雑所得 | 総合 | |||
17 | 無利息額面発行債券 | 売却益 | 譲渡所得 | 総合 | 50万円の特別控除あり |
償還益 | 雑所得 | 総合 | |||
18 | NISA口座の取引 | 売却益、配当金 | 非課税 | NA | 配当について、証券口座の種類を株式数配分比例方式にしていない場合は課税 |
※ 使われている省略記載
総合 : 総合課税 「他の所得と合算して税金を計算し納める。税率は累進課税なので所得が多い人は税率が高くなる」
申分 : 申告分離課税 「他の所得と合算せずこの所得だけで税金を計算して納める」
申不 : 申告不要 「源泉徴収される所得について、納税者が申告するかしないかを選択することができるもの。」
源分 : 源泉分離課税 「所得について一定の税金が天引きされるもの」
マル優適格 : 少額貯蓄非課税制度 「障碍者等一定の方の有する元本350万円までの利子所得を非課税にする制度」
特マル優 : 少額公債非課税制度 「国債等の元本350万円までの利子所得を非課税にする制度」
税務上の損益の計算のやり方
原則 : 「所得の金額 = 売却収入 - (取得費 + 売却手数料等)」
取得額には購入の際に必要になった手数料等も含めます。取得価格は以下の順番で確定させます。
- 取引報告書が手元にある場合には、取引報告書で確認
- 証券会社の顧客勘定元帳の写しで確認
- 本人の手控え(日記帳や預金通帳)
- 購入した時期の株価(株券がある場合は名義書き換え日や、株主名簿の取得時期)
※ 2の証券会社の顧客勘定元帳は、証券会社に10年保管されてますので問い合わせると取得できます。手数料が取られるので注意です。
※ 4の株主名簿については一義的には株主名簿管理人として指定されている信託銀行などが保有しています。ただし、会社側も株主名簿は持っていますので、会社側に問い合わせると親切で教えてくれるかもしれませんので、まずは会社に問い合わせるのをお勧めします。
注意:購入の日と売却の日の計算は特殊
原則は「受渡日」。ただし、「約定日」を選択することもできる。
証券会社の口座の種類による納税の違い
- 特定口座(源泉徴収あり): 「証券会社が納税のための損益計算をして源泉徴収分の納税を行う口座」
- 特定口座(源泉徴収なし): 「証券会社が納税のための損益計算をするが源泉徴収分の納税はしない口座」
- 一般口座 : 「納税のための損益計算は納税者が行う口座」
証券会社に一般口座を作ろうとすると執拗に特定口座の開設を勧められたりもします。
ちょっと高度な金融商品に関する節税。節税売り、節税買戻しとは
金融商品は基本的には売却の日を基準にして所得を計算します。
利益を抱えていても売却(買戻し)をしなければ利益は確定しない。逆の損失もしかり。
そのため、12月時点でトータルが利益の方は、12月に含み損を抱えた銘柄を処分して損失を確定させる一方、含み益を抱えている銘柄を持ち越すことで、納税を先延ばしする行為がおこなわれたりします。