今回はコラムです。税理士への処分が2014年度は59件と過去最多を記録したニュースがありました。
脱税を指南するなどして国税庁から懲戒処分を受ける税理士や税理士法人が増えている。2014年度の処分は過去最多の59件に上り、10年前の約3倍。背景には、税理士の増加などに伴う顧客獲得競争の激化があるとみられ、日本税理士会連合会は倫理研修を通じて指導を徹底する方針だ。
中略
脱税事件を巡っては、東京地検特捜部による税理士の摘発が相次いでいる。10〜11月に2件の法人税法違反で起訴された元税理士の植田茅被告(70)は、 脱税に目を光らせる国税局のOBでもあった。事件では別の税理士も起訴されており、検察幹部は「金目当てに際どい仕事をするケースが近年目立つ」と指摘する。(2015/12/5 毎日新聞)
※ ちなみに、現在は国税庁の情報を確認すると11月2日付けで33件のようです(国税HP 税理士・税理士法人に対する懲戒処分等)。
論調としては、「税理士の数が増加→競争が激化→不適切な行動をとる税理士が増加→懲戒処分増加」となっているようです(例:2015/9/22 日本経済新聞)。
非常に違和感を感じます。
確かに競争は激化しています。2002年の税理士法改正で報酬規程がなくなり、自由な報酬体系を利用できるようになりましたので、価格競争は激しいです。
しかし、懲戒処分等の対象となった事例は主に3つに分けられ、それを見ると報酬が安くなったからやってしまったとはお門違いな印象です。
ケース1 ウソの申告書を書く
繁盛しているのに繁盛していないと申告する。数十年前までは飲食の業界では売上の未計上は結構横行していました。レジが普及してあるていど変わりました。税務署は外に張り込んで客数をカウントして申告が正しいか調査したりしていました。弊社のお客様にはいらっしゃいませんが、同業ではそういう対応を求められたケースも聞きます。もちろん税理士からはそのようなことは断られ、諭され顧問契約を解除されるでしょう。
ケース2 脱税指南
これもピンキリですが、処分を受けるのはかなり悪質性の高いものです。例えば、
東京都内の出会い系サイト運営会社や医療法人に脱税を指南し、計約13億円の法人所得を隠し、約3億9千万円を脱税した疑いがある(2015/11/28 朝日新聞)
顧問先の広告会社を受け皿に、架空の宣伝費を計上して、別の会社の脱税を手助けした(2015/12/5 毎日新聞)
ケース1の「ウソの申告書」との線引きが難しいですね。
ケース3 税理士じゃない人に名義を貸してしまう
これは非常に多いらしく、税理士会が神経をとがらせています。我々税理士も、税理士会に口を酸っぱくして指導を受けています。処分で一番件数が多いからでしょう。例えば、こんなケースです。
業務禁止の懲戒処分を受けている間に、別の税理士名義で営業し、所得税と消費税計約1億3600万円を脱税した ~ 中略 ~ 共謀し、細川容疑者が懲戒処分を受けて税理士業を禁止されていた平成23年、事務所名を変更して佐久間容疑者名義で営業を継続。同年から25年までに佐久 間容疑者名義で確定申告する方法で、架空の外注費を計上し細川容疑者の所得約2億5900万円を隠すなどしたとしている。(2015/12/2 産経WEST)
このケースでは完全にアウトです。しかし、この件はこんなに単純じゃないケースもあります。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の一環として、経理部門を外部に外注するケースも一般的になってきました。経理に税務は切っても切れない中、税理士の名義を借りて手広く税務まで含めてサービスをしている会社も問題視されます。
以上、なかなか士業も競争が激しく大変な世の中になってきたものです。
世の中の論調と、実際は異なるものです。
お読みいただけると感じると思いますが、数億円の脱税指南や名義貸しは、基本的には顧問報酬の水準が下がったから行うという因果関係は低そうです。