会社が大きくなってくるとあふれてくる書類。

起業して会社を設立したばかりだと実感わかないかもしれませんが、すぐに大量の書類にまみれることになります。

 

大企業では、書庫というフロアがあるところもありました。

1つの階が全て書類という状況です。それにプラスして郊外に書類を保存する倉庫も。

 

弊社のような税理士法人も外部倉庫を活用して書類の整理をするのが一般的です。

 

しかし、ちょっと待ってください。紙はこれからも重要な媒体になるでしょうが、これだけITが発達したのですから、電子保存という選択肢があっても良いと思いませんか?

電子保存なら部屋いっぱいの書類も数センチのSDカードに収まってしまう(普通はサーバーに保存しますが)。

さらに、「あれどこだっけな?」と書類をひっくり返して探すこともない(検索で一発)

 

さて、今日はそんな疑問にお答えします。

まず、押さえておくルール2つを確認しましょう

  • 電子文書法(e-文書法)
  • 国税のルール(電子帳簿保存法)

 

電子文書法(以下、e-文書法)の解説

まずは、税務に限らず公的な文書を電子保存する際の基本となるe-文書法の確認です。

e-文書法によって何が変わるかというと「保存義務のある書面の電子化」が可能になります。

しかし、対象から外れる例外もありますので押させておきましょう。

  • 緊急時に即座に見読可能な状態にする必要があるもの(船舶に備える安全手引書など)
  • 現物性が極めて高いもの(免許証、許可証など)※現物を携帯していることが重要
  • 条約による制限があるもの

感覚的にもしっくりくる、至極常識的な例外の範囲でしょう。

ほぼ全てのものが対象ですが、税金関連のように他の法律による制約がある場合があるのでその点は注意です。基本的には税関連と、業界関連の特殊な規制を確認しておけば良いでしょう。

 

さて、ここで大きな誤解

電子保存するだけでOKならめっちゃ便利じゃん。すぐにスキャンして紙を撤去するぞ!

実はまだそこまで簡単じゃないんです。

4つの要件があります。

1. 見読性

表示されたものを人間が見て読めること。当たり前。

2. 完全性

一部が欠けたり、後から変更されたりしないこと。

3. 機密性

不正アクセスから守られていること。

4. 検索性

検索できるように体系化されていること。

 

いかがでしょうか。特に2の完全性については税関連、医療関連、消防関連で高い水準を要求されています。

具体的にどうしたらいいんだ!ということで、簡単に言うと以下の手順になります。

対応しているシステムを購入し(1万円~数百万円)、法務省の電子証明書を購入して(2年で1万5千円)設定して保存。スキャナは何でも結構です。

意外に簡単ではないでしょうか。ただし、法律を読み解いて具体的な方法を探るのは大変です。

これでほとんどの文書をパソコンに保存することができるようになりました。

次に、経理部を悩ます書類の本山、帳簿や税務関連書類にまいります。

 

電子帳簿保存法(国税/地方税のルール)

地方税は国税に準ずる取扱いとなっているので、「税関連」として解説します。

税関連では電子で保存することをスキャナ保存と表現しています。

対象は決算関係書類を除く全ての税務関連書類です(平成27年度税制改正により拡大しました)。

帳簿に関しては通常のパッケージの会計システムを利用していれば問題ないでしょう。

また、紙面で作成した書類の保存にはe-文書法の項目で記載した具体的な構成でスキャナ保存すれば問題ないです。ただし、利用するスキャナは固定型でないといけないので、カメラやスマホ、ハンドスキャナでスキャンしたものはNGです。国税に問い合わせても、具体的な回答は期待できない項目ですから、要件を満たすかは社内で確認する必要があります。

 

2015/11/20 追記:日経新聞によれば2017年からカメラでの領収書等の保存が解禁される見込みです。

政府・与党は従業員が経費精算のためにもらうタクシー代や飲食代などの領収書について、会社が保管する義務を2017年から緩める方針を固めた。領収書は税務調査の証拠となるため、原則7年間の保管義務がある。現在もスキャナーで読み取って電子データを保存すれば原本を捨てられるが、17年からはスマートフォン(スマホ)やデジタルカメラ(デジカメ)で撮影した場合も廃棄を認める。~以下略 (記事本文 日本経済新聞 2015/11/20)

 

ほぼすべて電子保存できるので、ここではスキャナ保存できず、紙で保存しなければならないものは「決算関係書類」とだけ押さえておきましょう。決算関係書類は、事業報告や貸借対照表、損益計算書などがつづってある決算期ごとに作成するものです。これも電子化して良い気もしますが、現状では認められていません。

一点、税関連で電子保存する場合には国税に電子化開始の3か月前までに書類を提出して承認を貰う必要があります。初めて記載される方は少し手間取る書類です。ご注意ください。


 

いかがでしたでしょうか。今回は、ほぼすべての書類を電子化する方法を解説しました。

実は、要件が緩い一部の書類をパソコン等に電子保存するだけであれば、もっと簡単な方法もあります。

ただ、毎回、「これは紙」、「これはパソコンに電子保存」というようにしていると業務が煩雑になります。もし電子保存を導入されるのであれば、おすすめは全てを電子保存する方式です。

書類に取られている場所の坪単価、外部倉庫の賃料、電子化による管理の簡素化を考えると、中堅以上の会社では電子保存で多くの経費削減ができますね。

電子保存で何かお困りの際にはお気軽にご連絡ください。