すごいニュースが出てきました。

身寄りのない高齢者の支援をうたう公益財団法人「日本ライフ協会」(東京都港区、浜田健士代表理事)が、公益認定法の定める手続きを経ずに高齢者から将来の葬儀代などとして預託金を集め、このうち約2億7400万円を流用し、全理事が19日に引責辞任することが分かった(以下略)

2016/1/19 毎日新聞

いままで成年被後見人等の問題はちらほら出てきておりましたが、公益財団法人で流用が起きるとは。。。世の中、何を信じてお金を託せばよいのかわからなくなります。

 

概要が内閣府の勧告書に出ていますので、確認していきましょう。

 

会社のビジネスの内容

高齢者の下記をサポート

  • 身元保証(賃貸住宅に入る際の身元保証等)
  •  暮らしのサポート(安否確認や入院手続き等)
  • 万が一の時の支援 (危篤になった際の家族連絡等)
  • 葬儀支援(本人の希望通りのエンディング)
  • 金銭管理(金銭預託、財産管理)

いろいろなニーズとビジネスがあるものです。

今回は、「金銭管理」のところで問題が起きました。

代表的な契約プランでは、利用者が支払う総額約165万円のうち身元保証料など約106万円は協会に入り、残りの約58万円は将来の葬儀費などに充てるための預託金とされる。

106万円が売上、58万円が将来の葬儀等の対応のための預かり金というプランが一般的なようです。

58万円の預かった公益財団法人のものではない人のお金を流用してしまった。

 

公益財団法人ってなんなのか確認

公益性を認定された社団法人。要は公益性が高いので税金を免除された事業体。

実務的には公益性の認定は取るのが結構大変です。しかし、認定を受けることで事業に税金がかからなくなるので扱う額が大きくなるとメリットが大きい制度。

賛同者からの寄付金も集めやすい(寄付した方が税務メリット受けられる)ため、相続対策としても検討されたりします。

内閣府の勧告書の中身を確認

高齢者からお金を預かる仕組みの概要

公益財団法人は高齢者から葬儀等に備えてお金を預かる。

預かったお金は公益財団法人のものではなく、あくまで預かったものであるため事業資金とは区別して減らないように保管する。

会社が別口座で管理すると、何かの拍子に使ってしまう恐れがあるため、高齢者から預かったお金は厳重に第三者である弁護士事務所等が管理して公益法人が勝手に使えないように制限。

証券会社の行う分別管理(顧客のお金と会社のお金を別で管理)という当たり前のことです。

 

預かったお金は弁護士等の会社以外のものが管理するルールを公益認定受けて早々に破って流用

認定のわずか3か月後に監督官庁に無断で会社が管理する方針に決定し流用開始。

高齢者から預かった総額9億円弱のうち、3億円弱を流用した。現在もこのマイナス分は回復できていない。

 

内閣府の勧告を読んでみる

内閣府の勧告は長いのでかいつまんで。

 

当該法人は、公益認定砲第11条に基づく変更認定を行政庁から受けることなく独自の判断で公益事業目的事業の内容を変更し、その上、当該法人が当該利用者から預託金を自ら預かる契約(以下、「二者契約」という)を締結して当該事業を実施し、さらに、このような契約に基づき当該法人に払い込まれ、当該法人が保全・管理すべき預託金(以下「二者契約預託金という)を当該利用者に何らの説明をすることなく、当該法人の事業等に流用することにより、二社契約預託金の残存額と、本来確保すべき流動性の高い資産との間に多大な差額(以下「預託金不足額」という)を生じさせた

預かっているお金に手を付けたということです。

経理的基礎を早急に回復、確立するため、以下の措置を講ずること。

(1) 二者契約預託金額に相当する流動性の高い資産を速やかに確保する方策について、当該法人が置かれている状況を踏まえた役員報酬・手当等の削減や、このような事態を招いたやくいんとうの損害賠償責任の有無を含め検討し、これを実行する計画(以下「回復計画」という)を作成すること。中略

(2) 回復計画を達成するまでの間、当該利用者を保護する観点から二者契約預託金を適切に保全・管理するため、二者契約預託金に係る収入、支出その他の資金の移動を、当該法人の機関から独立して保全・管理する総括責任者を設置するとともに、その保全・管理方法についてきていした運用管理規定を整備することにより、二者契約預託金の保全・管理を図る体制を確立すること

(3) 当該利用者を保護するとともに、公益認定法を順守する観点から、すでに契約した二者契約について、解約又は三者契約への速やかな変更を図る計画(以下「変更計画」という)を作成すること

宿題が課せられました

  1. 経費削減で財務体質を向上させて、使ってしまったお金を穴埋めせよ
  2. 役員(理事等)の責任を明確にして損害賠償を検討せよ
  3. 会社が預かったお金を管理する体制を解消して、第三者が管理する安全な方針へ戻す契約を立てよ

至極ごもっともです。

 

行政庁に提出した平成26年度の貸借対照表において、負債計上されている預託金を下回る流動資産しか保有していなかった。このことについて報告を求めた9月報告書及び11月報告書によれば、預託金総額883,761,410円のうち、預託金不足額は274,122,941円にのぼり、その解消には今後約6年かかる見込みであるとしており、その間、当該法人は預託金不足の状態が継続することになる

これを見ると流用された額は274百万円ではないですね。法人の流動資産と預託金の差が274百万円ということは、運転資金等も考慮すると実質的にはもっと多くの流用があったということです。

当該法人は、9月報告書において「預託金不足額の回復を最優先事項である」としているが、以下の通り、預託金不足額を速やかに回復するために可能な措置が尽くされておらず、また、新たな預託金不足額の発生を防止するために必要な措置が講じられているとは認められない。

(1) 9月報告書中の預託金不足額の解消に向けた平成27年度の費用節減計画において、平成26年度実績と比較し、地代家賃が約4000万円増加しており、その主な要因は、平成27年に特定の執務室に係る定期賃借権契約を締結したことである。

当該法人に確認したところ、同契約は契約期間を5年とする定期建物賃貸借契約であり、当該契約期間中は当該法人からは解約できず、当該契約期間満了による同契約の終了時に安い物件に移転する意向を示している。同契約を解約できない間、同契約が預託金不足額の開放にとって大きな制約要因となるが、このことに対する当該法人における責任の所在が明確にされておらず、適切な措置も講じられていないと考えられる

(2) 当該法人の役員には、賃貸住宅賃料補助等多くの種類の手当てが支給されることとされており、また、常勤理事には、退職金規定第2条の退職金とは別に、退職時に解約することを前提として、当該法人が保険料を負担する終身保険契約が締結されている。

役員に対する手当は、預託金不足額の存在が明らかになった後に減額されているが、それらの手当て及び終身保険が預託金不足額の解消にとって制約要因となるものであることに変わりはない。当該法人が置かれている状況に鑑み、かつ、預託金不足額の存在に対する当該法人における責任の所在が明確にされていない状況を踏まえると預託金不足額を速やかに回復するためにできる限りの措置が講じられているとは認められない。

(3) 流用等により預託金不足額が生じている二者契約預託金について、当該法人は4名で構成される「預託金管理委員会」を設置し、これを管理するとしているが、同委員会は法人内部に設置され、その4名のうち2名は、預託金不足額を生じさせた当該法人関係者である。また、預託金の保全・管理に関する明確な取り決めも定められていないなど、二者契約預託金の保全・管理のための適切な措置も講じらているとは認められない

以下、略

ずいぶんなザル経営をされているようです。役員報酬・手当を減らせという行政の指導の理由が垣間見えます。

ライフ協会新代表

旧理事が全員やめ、新理事が就任しました。新代表しかHPに記載はありませんが、内部昇進。新たな他の理事に内部昇進以外の外部からの有識者がそれなりに入っていると浄化しそうです。

高齢化社会が進行する中で終活の選択肢が広がるため公益性が高くニーズのある事業をされていると思います。一刻も早く浄化してくれることを祈ります。