12月17日に与党の税制改正大綱が公表されました。その中に以下の記載があります。

複数税率制度の下において適正な課税を確保する観点から、事業者に十分な説明を行いつつ、インボイス制度を導入する。当面は、執行可能性に配慮し、簡素な方法によることとする
恐るべし。。。週刊誌を連日賑わせているのもあり、聞いたことがある方も多いでしょう。
今回はインボイス方式について解説いたします。

インボイス方式とは。その特徴は消費税の申告の方法にアリ

日本は現在、消費税の仕組みは帳簿等保存方式という方法を採用しています。これは帳簿等に仕入れを記録しておいてそれに基づいて申告書を作成して納税する方法です。法人税等と同じであることと、現在の制度なのでイメージを持ちやすいと思います。
ところが今後新しく導入されるインボイス方式とは、インボイスを集め、そのインボイスに記載された金額を集計して納税するものです。申告書ではない。とにかくインボイス!ところでインボイスは日本語で”請求書”。なぜ請求書方式と呼ばないのか全く謎です。
インボイスという言葉は輸出入取引された方くらいしかパッとこないでしょう。輸出入取引ではインボイスインボイスとこの言葉が普通に飛び交います。
このインボイス方式はEUで実施されている仕組みで、世界標準といわれているものです。ただし、アメリカは売上税という最終消費者にわたるときに税を課す方式なので異なります。

軽減税率をいまの消費税の仕組みを堅持したまま行うにはインボイス方式は有力な方法

現在、日本は全商品一律の消費税率が適用されています。そのため、何をいくら売ったり買ったりしたかを記録しておけば、その額に消費税率を乗じて消費税額を計算できます。
しかし、食料品だけ税率が低いというような軽減税率を導入すると、一律に税率を乗じる方法ができなくなります。
そこで、請求書に個別に税額を記載し、その税額を集計して納めてもらう方式が採用されました。
今後は請求書に商品ごとに税率を記載していくことになるでしょう。
また、軽減税率を現在の帳簿等保存方式で行う場合はミスや不正の温床になる可能性が指摘されており、その意味でも他社の発行したインボイス(請求書)を元に消費税を集計して納税してもらう方式が好ましいのでしょう。

インボイス方式のメリット

  • 前段階の課税額が、取引先が発行した請求書により証明されるので不正が起きにくく公平
  • 軽減税率等、特定の商品や取引を税率を変えることによって促進・抑制する政策をしやすい
  • 会計期間に関わらず、集計していった消費税額が一定額になったら早く納税させることができる

何やら嫌な予感。インボイス方式で変わること

全ての取引で請求書を回収して保管、請求書の消費税額を集計。逆にこちら側からも請求書を発行する。商品ごとに税率を変えて作る。
事務作業はかなり増えることは確実です。国の具体的な制度設計はこれからなのですが、ヨーロッパ並みであると仮定すると2~6倍くらいの時間がかかるでしょう。
また、不正が行いにくくなる点と、原則的には課税事業者との取引しか消費税の控除が受けられないため、免税事業者が商売あがったり(売れなくなる)になる可能性があります。

今後、国の制度の詳細が決まったら急ピッチで実務へ落とし込む必要があります。経理担当者は注意が必要です。