皆さまは相続税というのをご存知でしょうか。
多額の財産を残して亡くなった場合に、受け取る資産に対して課される税金です。
”多額”の財産を持っていないとそもそも関係ないです。ですので、なかなか身近ではないのでよくわからない方も多いでしょう。私自身も、関係ないので、税理士をしていなければきっと気にも留めなかったでしょう。
そもそも、お金を稼いだ時に所得税を払っているのに、その残りでコツコツためた財産にも税金がかかる。その税率はなんと驚異の55%(最高税率)。2015年1月に改正され税率が引き上げられたため、最近注目を集めています。
ところで、この相続税。実は世界的には存在しない国のほうが圧倒的に多いのです。
相続税がある国は、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツくらい。
中国、ロシア、オーストラリアなどは無い。ヨーロッパもある国は少ない。また、相続税があるアメリカは基礎控除が500万ドル(6億円くらい)あるので、6億円以上持っていないと相続税がかからない。
日本は3000万円しか基礎控除がないので、法定相続人が1名と仮定しても3600万円以上の財産が相続税対象になる。厳しいですね。
そこで、富裕層の方は相続税の対応をしたりします。なかなか触れる機会がない方が圧倒的に多いと思いますので「へ~」くらいの感覚でお読みいただければ幸いです。
富裕層の財産管理の人気を2分する家族信託と成年後見人制度
億を超える財産を残した場合、後世に伝えるときに相続税で目減りします。また、財産を築いた方が、元気なうちはいいですが、だんだんと衰えてきたときに、財産の管理が問題になります。生きているうちに子供に財産を渡すと贈与税という、これまた率が高い税金が課せられます。契約で管理を子供に任せる等可能といえば可能ですが、ややこしいし、税務署の突っ込みどころが満載になる可能性を否定できないのでおすすめできない。
そこで登場するのが家族信託。信託というのは「信じて託す」という漢字のままです。家族に信じて託す。
家族信託の良いところは、関係者全員でリーダーを決め、全員参加で財産を運用していけることでしょうか。だから”家族”信託というのでしょう。
イメージとしては、ポンと”家族の財産”を切り分けてみんなで運用していく。
しかし、これだと財産を持っている人が一度財産を手放すことになります(受益権というのは何もしなければ残ります)。また、リーダーを決めなければならないので、関係者の仲が悪いと揉めて収集がつきません。
そのため、一番力を持った人が全てを決めるという成年後見人という手法も使われます。知力、体力が衰えてきた財産を持っている人に代わって、その人のために財産の管理をする人を決める制度です。この制度は、”その人のために”という点が特徴的で、財産を持っている人のためになるようなことしかできません。非常に使い勝手の良い制度ですが、相続対策で土地を現金化しようとした時に、その行為は”その人のため”ではなく、相続人のためになって法律上問題を生じる可能性があります。簡単に言うと、相続対策を自由にできない窮屈さがあります。
また、財産をあづけた人が不正をするケースもあります。例えば、今日の日経新聞の記事。
成年後見人として管理していた現金約6700万円を着服したとして、東京地検特捜部は17日、司法書士の山口雄一容疑者(63)=千葉県柏市=を業務上横領容疑で逮捕した。
知らない間に司法書士に使われているとか、本人やご家族の方は思いもよらないでしょう。このリスクは認識しておくべきです。
結局、家族信託と成年後見人のどちらが良いのか
どちらも、メリットデメリットありますが、基本的には家族信託が良いでしょう。
そのために、資産を残される方がやるべきこととして、家族の仲を良くするというところでしょうか。財産の管理報告などの手続き的なことは当社のような会計事務所に丸投げができます。仲良く家族全体として方針を決められる。そこが求められます。
そこができていないのであれば、成年後見人が良いでしょう。成年後見人は家族と関係なくプロに全て丸投げもできますし。
以上、いかがでしたでしょうか。
お金持ちにはお金持ちの悩みがあることが垣間見えましたでしょうか。とはいえ、商売や会社経営で成功すれば本記事のようなことも考えなければなりません。