工藤会トップの8億円が福岡国税局に差し押さえられたニュースがありました。
傘下の暴力団組員から集めた「上納金」をめぐる脱税事件で、福岡国税局が特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)トップの野村悟被告(69)=所得税法違反罪などで起訴=の個人口座から約8億円を差し押さえていたことが10日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、福岡国税局の税務調査で、野村被告が2014年までの7年間に得た所得について所得税約5億5千万円を納めていなかったことが判明。重加算税を含め約8億円を追徴課税した。
本件、なかなか税務的に興味深い事例です。
PTA、同窓会、町内会、自警団、サークルなどには営利事業なければ税金がかからない
税務の世界では「人格のない社団等」(わかりやすく言うとPTA, 同窓会, 町内会, 自警団など)は収益を目的とした事業のみに税金が課せられます。
これは明確な線引きがされていないので、例えば町内会議所でセミナーを行って参加費を募ったとしても、その額が高額ではなく、内容も趣味や教育を目的とするようなものであれば収益事業ではないという説明ができます。基本的に無税なのです。
実は工藤会は人格のない社団という扱いでしょうから、上納金は町内会費と同じような性質ととらえられ、基本的に無税です。
今回は、捜査の過程で上納金がトップ個人に関係する口座に振り込まれたことで、個人に所属する所得であるという見解で摘発されました。
この捜査の過程で、工藤会の金庫番とされる組員が残した詳細な記録が見つかりました。
そこには、工藤会がどのように上納金を集めたか、また野村容疑者が関係する口座にいくら振り込まれたかなど、金の流れが克明に記されていました。
これが決め手のひとつとなって、上納金の一部が組織ではなく野村容疑者個人に属する所得だとみなされ、脱税の摘発にいたったのです。(NHK 時論公論)
町内会やサークルに今後求められるお金の管理
この見解が定着してしまうと、町内会費などが個人の口座に振り込まれ、その使い道が不明な場合は所得税法違反で摘発されます。町内会費は会長個人名義の銀行口座のことも非常に多いでしょうから(町内会名義の銀行口座は簡単には作れない)、使い道が不明瞭だとアウトです。また、町内会費で視察と称して個人旅行ととられかねない出張など、個人のお金と判断される可能性がある行為は危険なので注意しましょう。
いかがでしたでしょうか。世の中は常に変わります。
以前は全く問題なかったPTA、町内会、自警団、同窓会、サークル・・・会費を徴収する「人格のない社団等」が摘発を避けるのに必要な管理を説明いたしました。
本件は、裁判の結果等によっては杞憂に終わるかもしれませんが、悪質性のある脱税の時効は7年です。いまからしっかり対策しておいて損はないでしょう。