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~平成28年度以降の確定申告の注意点~

平成27年度の税制改正により、年末調整において、日本国外に居住する親族の扶養控除等(扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除)の適用を受ける場合には、その親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出(又は提示)することが義務化されました。今回はその点について解説いたします。

扶養確認の厳格化された背景

扶養控除とは、親族を養う人の税負担を軽くしようというもので、個人の所得税や住民税などは親族を扶養することによって所得控除が受けられ税金が安くなります。

扶養控除を適用したい親族が国内に居住している場合、同居していようがしていまいが国内のことですので、その続き柄や所得の有無などについては自治体が把握することが可能ですが、その親族が国外に居住しているような場合には、扶養の実態、さらにはその親族の存在を確認することすら困難です。
しかしこれまで、国外に住む親族については証明書類の提出義務はなく、「扶養控除等申告書」による自己申告の内容の真偽を確かめる術がなかったため、その届けの内容を信じて処理していたのが現状でした。

この点については以前から指摘されていたことではあったのですが、平成25年、国の支出等の監査を行う会計監査院が、国の予算などが適正に使われているか検査した結果を報告書として取りまとめ、この中で、海外に住む親族を扶養しているとして所得税の控除を受けている外国人と結婚している日本人や、日本で働く外国人、およそ1300人についての扶養の状況を公表しました。
その結果、扶養する親族が多く控除額が高くなり、所得税を全く課税されてない人がおよそ69%に上ることが明らかになったのです。実際には73万円しか送金していないのに、1062万円を控除して税金の還付を受け取っていたケースもありました。国別の”人数”だとフィリピンがおよそ7割で圧倒的に多い(額でどこの国が多いかは不明)
さらに、親族であることを確認する書類などの提出が任意となっているため、控除が適切か十分確認できていない点についても会計監査院から正式に指摘されたことで、今回の改正への運びとなりました。

それでは、具体的にどういった書類の提出が必要になったのでしょうか。

「親族関係書類」とは

「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。

  1. 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
  2. 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」)が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限る。一つの書類に全てが記載されていない場合には、複数の書類を組み合わせることによって必須事項がすべて明らかになればOKです!)例えば、戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書などがこれに該当します。

「親族関係書類」は、国外居住親族の旅券の写しを除いて原本の提出又は提示が必要であることに注意が必要です。
また、一つの書類だけでは国外居住親族が居住者の親族であることを証明することができない場合には、複数の書類を組み合わせることによって、居住者の親族であることを明らか にする必要があります。さらに、通常は翻訳文を添付する必要があります。
なお、16 歳未満の国外に居住する扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び下記の送金関係書類の提出又は提示が必要となりますので、ご注意下さい。

「送金関係書類」とは

「送金関係書類」とは、次の書類で、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。

  1.  金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類。具体的には外国送金依頼書の控えなどがこれに該当しますが、その年において送金をした外国送金依頼書の控えである必要があります。
  2.  いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、又は受領することとなることを明らかにする書類。具体的にはクレジットカードの利用明細書がこれに該当します。

ただし、居住者(本人)がクレジットカード発行会社と契約を締結し、国外居住親族が使用するために発行されたクレジットカードで、その利用代金を居住者が支払うこととしているもの(いわゆる家族カード)に係る利用明細書をいいます。この場合、その利用明細書は家族カードの名義人となっている国外居住親族の送金関係書類として取り扱います。
また、クレジットカードの利用明細書は、クレジットカードの利用日の年分の送金関係書類となりますので、クレジットカードの利用代金の支払(引落し)日の年分の送金関係書類とはならないことに注意が必要です。

「送金関係書類」については、原本に限らずその写しも送金関係書類として取り扱うことができます。
また、国外居住親族が複数いる場合には、送金関係書類は扶養控除等を適用する国外居住親
族の各人ごとに必要となります。例えば、国外に居住する配偶者と子がいる場合で、配偶者に対してまとめて送金している場合には、その送金に係る送金関係書類は、配偶者(送金の相手方)のみに対する送金関係書類として取り扱い、子の送金関係書類として取り扱うことはできません。
さらに、送金関係書類については、扶養控除等を適用する年に送金等を行った全ての書類を提出又は提示する必要があります。ただし、同一の国外居住親族への送金等が年3回以上となる場合には、一定の事項を記載した明細書の提出と各国外居住親族のその年最初と最後に送金等をした際の送金関係書類の提出又は提示をすることにより、それ以外の送金関係書類の提出又は提示を省略することができます。この場合、提出又は提示を省略した送金関係書類については、居住者本人が保管する必要があります。

扶養確認書類の厳格化まとめ

この改正は、平成 28 年1月1日以後に支払を受けるべき給与等及び公的年金等について
適用されます。
国外に扶養親族がいる場合、必要な添付書類が増えましたので、今年度の年末調整は早めの準備が大切です。

なお、確定申告においても、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合には「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付、又は確定申告書の提出の際に提示しなければならないこととされました。ただし、年末調整の際に源泉徴収義務者に提出、又は提示したこれらの書類については、確定申告書に添付又は提示を要しないこととされています。

養子縁組して送金してからの日本日本還流などのスキームを使うとイタチごっこがまた始まってしまうかもしれませんが、ひとまずこれで落ち着いてくれるでしょうか。