起業した。会社を受け継いだ。

事業を大きくしていつかは上場できるような会社を作りたい。

ぼんやりとでもそんな風に考えられている経営者も多いのではないでしょうか。

また、起業の際にいきなりベンチャーキャピタルやエンジェルから資金を調達して一気に上場を目指す場合もあるでしょう。

経営者であれば、だれでも一度は上場を意識してメリットデメリットを確認するのではないでしょうか。

今回は、そんなメリットデメリットという次元では表現できない、上場企業の生き残りのしぶとさ的なところを感じ取っていただける事例を説明させていただきたいと思います。

良くも悪くも上場企業へのイメージが変わるかもしれません。

 

トンデモナイしぶとさの上場企業LCAホールディングス

昨日、2015/11/30に上場廃止した会社があります。その名は「LCAホールディングス」

創業50年。コンサルティング業務を主な事業として、八つ橋の製造工程のコンサルティングからスタートし、その後さまざまな事業を行いました。

 

LCAホールディングスの沿革を確認

LCAホールディングス沿革

いろいろな事業をやりつつ、いろいろな会社も買収、資本金額も58億を超えました。

 

LCAホールディングスの壮大な税務署との戦いの物語

 

上場企業なのに税務署(都税)から預金口座差し押さえを受ける

LCAホールディングス1Q現預金

差し押さえ直前の現預金。9400万円ある

 

東京都の差し押さえ

東京都が未払いの税金3800万円を取り立てようと、銀行口座に差し押さえを実行。

結果、取れた金額は5万6千円という惨敗に。。。

LCAホールディングス 2Q現預金

その後、差し押さえから1ヶ月ちょっとで現預金 1億2500万円ほどに。

 

これをみた東京都はおそらく怒り心頭。許せない。

さっそく、また差し押さえ。今度はすごい

東京都差し押さえ 現金

前回は、銀行口座に差し押さえをかけて失敗。銀行口座にお金はない。

きっと現金で持っているはずだ。会社に押しかける。

あれ。。。600万円しかない!?またもや会社に出し抜かれる。

しかし、見てください。押収物。

クオカード、買ってストックしておいた収入印紙、株券・・・金庫の中身全部持って行きました。東京都の怒りが伝わってきます。税務署は恐ろしい。怒りは収まらない。

東京都の差し押さえ オフィス保証金

日を空けず、またもや差し押さえ。今度はオフィスの敷金。

1億2000万あるはずの現金はどこかに隠されている。どこにあるのか吐かない。これは戦いだ。

敷金200万円を差し押さえて、退去をを防ぐために金を出させ揺さぶりをかける。

ここで東京都の主税局の公式ツイッターの姿勢を見てみましょう。


「12月は差押えやタイヤロック、捜索等の滞納処分など、多様な徴収対策に連携して取り組んでいます。」

経営者の方は血の気が引いたのではないでしょうか。

 

 

LCAホールディングス増資

増資により乗り切る。増資で得た資金の使い道が全て借金の返済。絶体絶命の危機を、上場企業であったために助かる。

 

上場廃止に至るまで

石ころのような不動産を金ピカな不動産と偽って水増し増資

平成21年、債務超過に陥り、その状況を解消するため不動産の現物出資を受けます(現物出資の詳しい内容は別の記事がありますのでわからない方は参照ください)。

不動産を現物出資するには不動産鑑定士の評価と弁護士の確認が必要(検査役調査を省略する場合)。

LCAホールディングス 不動産の現物出資

LCAホールディングス 不動産評価額

不動産を26億円の価値として増資しました。

 

しかし、金融庁が待ったをかけた。あとから出してきたところをみると、上場を廃止させたい意図が見え隠れ。

LCAホールディングス 金融庁の指摘 第三者委員会

第三者委員会を設置して当該不動産の内容を調査。結果・・・

LCAホールディングス 不動産鑑定 恣意介入

本来は現物出資の対象としない予定であった不動産を、債務超過回避のため強引に組み入れ、さらにその不動産に架空と思われる賃貸契約を締結して不動産価格を吊り上げました。

LCAホールディングス 架空賃貸契約

380万円の賃貸契約を締結する一方、300万円の業務委託契約も締結することで、300万円支払って380万円受け取る。380万円の賃料が入ってくる優良物件として不動産を鑑定評価。

アウト!!!財務諸表の修正命令が発動します。

財務諸表の修正命令

まさかの、金融庁に対して訴訟をする覚悟を見せつける。

LCAホールディングス 金融庁に対して訴訟を辞さない

現実を考えて心折れる。。。

LCAホールディングス 金融庁への訴訟を諦める

金融庁と戦えば上場廃止。さすがにそこは避けた。

 

しかし、息をつかさず東京証券取引所から社内管理ができていないから、改善しないと上場廃止だと突きつけられる。

LCAホールディングス 管理体制不足

結局、この内部管理体制の改善が見られないという理由で上場廃止になりました。

 

(おまけ)旧経営者を訴える

上場企業の取締役、監査役などの役員は常に損害賠償責任を追及される可能性がある。善管注意義務と忠実義務というものを負っているので、違反した場合は損害賠償。厄介なことに、なにをすれば善管注意義務違反等なのか明確ではない。

LCAホールディングスは今回の不動産増資がらみで旧経営陣を訴えました。

LCAホールディングス 役員損害賠償訴訟

LCAホールディングス 役員損害賠償訴訟 請求額

請求の額は4億円

 

LCAホールディングス 役員の責任追及 和解

結局、4億円の損害なのか証拠を出せずに、ごめんなさいだけさせて和解。和解金はゼロ。訴訟費用は各自負担なので、弁護士費用分マイナスだった。。。それにしても、上場企業は通常は役員賠償保険というのに加入していて、保険から支払われるのですが・・・保険にも入っていなかったんですね。